緒言
喫煙は先進国や発展途上国を問わず重篤な疾患や早期死亡の原因となっている。喫煙への依存は慢性的で克服することは難しい。喫煙によって誘発される疾患の治療は医療費の中で大きな部分を占めている。
薬剤師は他の医療従事者とともに、喫煙を止めたいと思っている人々には支援するとともに、喫煙を続けている人々には禁煙を奨励する責務がある。この目的に向かって、薬剤師はWHOの「タバコ一掃構想」とその具体的な行動計画を支持するものである。FIPはすでに禁煙に対する世界的な連携組織を設けている。この連携組織は個々の薬剤師がそれぞれの国の薬剤師会を通して薬剤師の役割を発揮するための情報交換、あるいは禁煙を成功させた個々の経験などの情報を持ち寄る良い機会を提供している。
薬剤師は地域社会において禁煙のために適切な行動を執るべきであるという見地からFIPは以下の勧告を行う。
薬剤師会は:
- FIPや地域の薬剤師組織を通してWHOの「タバコ一掃構想」に参画するべきである。
- 喫煙に反対する他の国際団体や政策決定活動に参画するべきである。
- 喫煙に反対する国内団体に参画するべきである。
- 根拠に基づく国内外の禁煙や喫煙依存の治療のためのガイドライン作成に参画するべきである。また薬局内では禁煙とし、薬局内ではタバコの販売をやめさせ、タバコを販売している場所での薬局開設の許可を与えないように働きかけるべきである。
- 薬剤師、薬学生および薬局助手に対して喫煙とそれに伴う危険性、禁煙までの過程について基礎教育とさらに引き続く生涯教育を行うべきである。
- 薬剤師会内では喫煙を禁止する内規を設けるべきであり、禁煙を試みる職員には支援するようにする。
- 「Quit and Win(止めるが勝ち)」キャンペーン、「世界禁煙デー」など全国民を対象とした運動に参加することにより、国民の健康問題に対する意識を喚起するべきである。
- 薬剤師の禁煙活動や禁煙を果たした実績を調査し、研究する計画を推進するべきである。
個々の薬剤師は:
- 確かな生涯教育に参加して喫煙、それに伴う危険性、禁煙に至る過程を習得し、禁煙に導くことができるよう知識と技術を習得する。
- 禁煙を希望する、あるいは喫煙による病気に悩んでいる個人やグループに対して積極的に禁煙に対しての行動を行うべきであり、地域社会で、あらゆる職種の人たちよる禁煙運動に参加するだけではなく、主導的に行動しなければならない。
- 喫煙の危険性を強調し、禁煙を呼びかけるマスコミのキャンペーンに参加するべきである。
- 自ら禁煙することにより範を示し、経験を披瀝することによって主導的に行動するべきである。また喫煙が薬剤の効果に影響することがあるので、喫煙者は薬歴に喫煙習慣のあることを明記するべきである。